出産後の体が元に戻るまでの期間(6〜8週間)を『産褥(じょく)期』と言います。産褥期は、体内で赤ちゃんを育むために変わっていた母体が、子宮の収縮などさまざまに変化していきます。

●子宮復古
本来の子宮の長さ(約7cm)に対し、妊娠末期の子宮底長は30〜35cmにまで広がり、容積は1000倍以上になっています。産後、子宮は4〜6週間かけて元の大きさに戻るため球状に収縮していきます。母乳を与えることで回復が促進すると言われています。

子宮復古に見られる症状
●悪露(おろ)
 子宮復古時、子宮内膜や子宮頸管、膣から分泌される分泌物を悪露と言います。血液成分が主ですが、時間が経つにつれ褐色から黄色と変わり、量も減っていきます。5〜6週間で分泌物がほとんどなくなってしまうのが一般的でしょう。

●後陣痛
 産後、陣痛のような痛みを覚えることがあります。この痛みは「あとばら」とも言われ、子宮が収縮する時に起こるもので心配はありません。出産を経験した人に多いのが特徴ですが、痛みがひどく耐えられない場合は鎮痛剤が必要なこともあります。

●乳汁分泌
 出産後は卵胞ホルモン、黄体ホルモン量が減少する一方で、乳汁の産生にかかわるプロラクチンの分泌が促進され、乳汁が出ます。これは赤ちゃんに乳首を通じて母乳を与えることで、子宮収縮を促すオキシトシンが分泌され、子宮復古が進むためです。

●産褥初発排卵
 産後初めての排卵を産褥初発排卵といいます。このタイミングは、授乳状態や体重の変化、貧血の有無などによって前後しますが、母乳だけで育てている場合、10カ月〜1年くらい、まったく母乳をあげていない場合は、2カ月くらいが一般的です。

●初乳
 出産直後に出る黄色っぽい母乳を「初乳」と言います。この初乳はタンパク質を多量に含みエネルギーも豊富。初乳に含まれる母体からの免疫物質が赤ちゃんに移行されるうえ、塩類、酵素もたっぷりあるので、赤ちゃんの健康的な成長のためにできるだけ与えたいもの。産後1週間で通常の成乳になります。

産褥期の異常
●子宮復古不全
 子宮収縮が不完全なため、子宮復古が遅れることを言います。異常な出血、感染症、子宮内膣癒着など、さまざまな疾患の原因になります。原因として胎盤片や卵膜片が子宮の中に残っていることが多いようです。お腹の痛み、異常な出血が続くようなら医師へ相談しましょう。

●産褥熱
 分娩中やその前後に起こる熱性疾患を総称して言います。主に分娩に伴う傷からの、細菌感染による産褥期感染症が原因とされています。最近では抗生物質での予防により、産褥熱の重症例や死亡はほとんどなくなりました。

○家庭でできる産褥熱の予防方法
 (1)妊娠中
  ・常に体の各部を清潔にしておく。
  ・妊娠末期(37週以降)の性交は避ける。
  ・妊娠期間中はコンドームを使用する
  ・虫歯、腎盂腎炎など細菌性疾患を完治させておく。

 (2)産褥期
  ・悪露の排泄状態に注意する。
  ・子宮の収縮状態に気を配り、異常出血など不安な状態があれば、産婦人科を受診する。
  ・外陰を清潔に保つ。


●乳腺炎
  乳房の腫脹や発赤を主な症状として、脇の下のリンパが腫れたりします。乳汁がうっ滞して起こる『うっ滞性乳腺炎』と乳頭の傷などから細菌が入ることによる『細菌性乳腺炎』があります。授乳後に残った乳汁をよく搾り出しておくことや、乳首を清潔に保つことで予防できます。助産師さんにマッサージを受けるのも効果的です。

●排尿障害
 分娩後、自然に排尿しにくい状態が1〜2日続くことがあります。1週間以上長引く場合は泌尿器科の受診が必要なこともあります。また出産を経てしばらくの間は、くしゃみや笑った後に尿漏れすることがあります。それは出産の際、骨盤の筋肉が疲労したり伸びきってしまったためで、筋肉の回復によって自然と解消されることが多いようです。気になる人は医師に相談を。

●痔
 出産時のいきみによって、切れ痔や脱肛になることがあります。これは、妊娠中から繊維質を含む食品を摂ることで予防できます。産後は便秘になりやすいので、規則的な食生活を心がけて悪化しないように心がけましょう。

●ゆううつ
 産後、一時的に精神的に不安定になることを、マタニティブルーと言います。疲労感、涙もろさ、不安感、当惑、頭痛、不眠、食欲不振、怒りっぽいなどが主な症状で、産後10日以内に出ることが多いようです。2週間以上続けば産後うつ病の可能性もありますので、場合によっては、病院で抗うつ剤を処方してもらうこともできます。何よりも家族の協力を得て、心を安定させていきましょう。

産婦健診
 産後うつの予防や新生児への虐待予防等を図るため、産後2週間、産後1カ月など産後間もない時期の産婦に対する健康診査が始まった市町があります。主としてエジンバラ質問票を活用して母親の心理状態や児に対する気持ちを把握し、支援が必要と判断された場合には子育て世代包括支援センターにも情報提供し、産後ケアなどを含めた支援を行うこととなっています。広島県では「ひろしま版ネウボラ」を県内全域で構築することとしており、妊娠期から子育て期までの切れ目のないサービスを提供するための身近な相談拠点の設置や仕組みづくりを目指しています。 妊産婦さんを支える体制が整いつつありますので、これらの制度を利用し一人で悩みを抱えこまないようにしましょう。