著名・有名人子育てインタビュー|子ども虐待防止オレンジリボン運動

ひとりで悩まないで著名・有名人子育てインタビュー

佐藤寿人さん
元サッカー選手

サッカー日本代表・サンフレッチェ広島のストライカーとして活躍した佐藤寿人さんに、子育ての楽しさや大変さなどをお聞きしました。

現役時代の仕事と育児はどのように両立をしていましたか?

佐藤:選手の時の方が比較的家にいる時間が多かったので。試合が無い日は、子どもが学校から家に帰ってくる前には僕が家に帰ってきていましたし、子どもが小さい頃はオムツ替えやお風呂に入れたりとか、サラリーマンで働かれているお父さんの方が家にいる時間がないと思うので、僕はどちらかというと子どもとの時間が多かった方だと思いますね。

遠征とかで長い期間、家に帰られない時もあったかと思います。

佐藤:家を空けてしまう時が多いので、それこそ夏休みとかゴールデンウィークとか世間が休みの時に家族旅行とかはほとんどできなかったですね。そういう意味では、家族でどこか遠出をするっていうのは、あまり連れていってあげられなかったので、そこだけはちょっと子どもたちが可哀想だったかなって思います。

お子様は全員、寿人さんが現役時代の時に産まれたんですか?

佐藤:そうですね。三男だけは僕の現役時代でそんなに活躍している時期ではなかったので、どちらかというとベンチにいる時が多くて、「何でお父さん試合じゃなくて、ピッチの前で走っているの?」みたいな時もあったので(笑)

試合に出られなかったり怪我などで、よりサッカーに集中しないといけない時期があったかと思うんですけど、そういった時は奥様との役割分担や気遣いなどはありましたか。

佐藤:ほとんど妻が家のことをしっかりやってくれていたので、自分は選手として集中できる環境を家族につくってもらっていました。あとは、これは夫婦で決めたことなんですけど、時には子どもを叱らないといけないことが子育ての中であると思うんですけど、例えば、妻が叱ったら僕は叱らずにサポートに回る。逆に僕が叱ったら妻がサポートに回るというか、二人で子どもを叱ってしまうと、子どもの逃げ場がなくなってしまうので、もう一人はちゃんとそこのフォローをしてあげようということを一人目の子育ての時に決めていました。

子育ての中で大変だったこと、悩んだことはありますか?

佐藤:20歳代前半の時に父親になったので、自分自身も大人かと言われたらそんなことはなかったですし。子育てをしながら成長していかないといけないというところもあったので、最初の頃は子どもをどう育てていくというのは、両親からしてもらったことを子どもにしてあげたいなと思う反面、できることできないことがありました。サッカー選手という仕事柄、普段は子どもと一緒にいれるんですけど、試合がある週末など、子どもが休みの時に一緒にいてあげられなかったことが多かったです。運動会とか発表会とか学校の行事にはほとんど出てあげられなかったですし、子どもたちに寂しい思いをさせてしまっているなと悩んだことはありました。だからこそ、違うところで挽回しなきゃなって思いましたね。

サッカー選手は若くして結婚される方が多いですよね。

佐藤:多いですね。僕の場合は、プロの世界に入ってすぐくらいに妻と出会って、プロとしてどうなるかわからないくらいの時から常に一緒にいてくれました。もちろん、サッカー選手という華やかな世界だけではなくて、中々芽が出ない苦しい時も見て感じてくれていたので、そういう時期を共感する部分では、若くして結婚してよかったかなと思います。

初めて子供ができて子育てを経験して、自分の中で変わったことは何かありますか。

佐藤:僕はどちらかというと、アクティブなオフを過ごすよりもゆっくり休みたいというタイプだったので、結婚するまでは外に遊びに出かけるというのはあまりなかったですね。結婚して、子どもが産まれてからは外に出る機会も増えてきましたし、両親にしてきてもらったことを子どもにしてあげたいという想いがありました。自分も子どもの頃、休みがあれば家族で出かけたり、夏休みであればキャンプをしたり川遊びをしたり釣りをしたり、冬であればスキーに行ったり、色々な経験をさせてもらったので、子どもたちにも経験をさせたいなという想いが強くなって、休日の過ごし方はアクティブになりましたね。

試合が無い時とかは、ほとんど子どもたちと過ごしていたんですか?

佐藤:そうですね、一緒に遊べる時間が多いので、子どもが小学生の時は学校から帰ってきて友達と遊ばない時は、一緒に公園に行ってボールを蹴ったり遊具で遊んだりとか、見ているだけでなくて子どもたちと一緒に遊んでいましたね(笑)

スポーツ選手は忙しいイメージがあったんですけど、オフの時はがっつりと子育てに参加されていたんですね。

佐藤:それこそ、週末に入っていくと試合で忙しくなりますけど、週頭や練習の負荷がない時だと15時頃には帰っていたので、そうすると子どもたちも学校から帰ってきて「どこか行く?公園行く?」みたいになっていました。会社で働いているお父さんの方が仕事をたくさんされているなと思っていましたし、中々子どもたちと遊べる機会はないんだろうなと思っていました。実際に自分も子どもの頃は、父が自営で中華料理屋を営んでいましたし、平日は父と過ごす時間はほとんどなかったです。ただ休みの日はずっと一緒にいてくれていたので、そういう経験があったので、できる限り時間がある時は子どもたちと一緒にいてあげたいなと思っています。

広島は子育てしやすい環境だと思いますか?

佐藤:広島は住環境もいいですし、広島の人の温かさをすごく感じますね。子育てに関しても、近所の人たちが大きな支えになってくれました。例えば、自分たちが困っているときに悩みを聞いてくれたり、時には力になって動いたりしてくれました。広島を離れてからでも家族ぐるみの付き合いは続いてますし、付き合いのある家族の子どもたちが成長していく姿も見ることができて、家族間のつながりがあるっていうのはありがたいですね。人が温かい広島だからこそ、そういうつながりを持てたのかなと思いますね。

周りに相談できる環境は大事ですよね。子育てがうまくいかないときは、親にとってもストレスがたまるものだと思いますが、寿人さんなりのストレス解消法はありますか?

佐藤:現役時代は練習場までの行き来の時間がとても長かったので、車の中で音楽を流して歌ったり、ラジオのある番組を聞くことで自分の中ではリフレッシュできることがあったので、移動中に仕事のスイッチと家のスイッチを変えていました。もちろん子供たちを叱る時はストレスを感じる部分もありましたし、でも叱らないといけないと思う反面、どこかで「まだ子どもなんだよね」って思わないといけない部分もあるので、感情的になることしませんでした。

奥様のストレスが溜まっていたり、悩んでいるなと感じた時にどういった対応をされていますか?

佐藤:しっかりと話を聞いて、夫婦間で悩みを共有するということは大事だったのかなと思います。あとはお互いに子育てに対して100点満点を求めないというのはすごく大事でした。若い頃に結婚したというのもあるので、中々自分たちも本当の意味で大人になりきれていないというか、そういう年齢でしたし、いろいろなことを経験しながら子育てを通して学ぶことも多かったので、僕が妻に対して多くを求めてしまうと妻もストレスになりますし、逆に妻から僕に対して「あれやってくれ、これやってくれ」って言われると多分そこはストレスになっていたと思うので、お互いに完璧を求めないというか、いい意味で余白を残しておくということで、なるべくストレスを感じさせない環境をつくるというのは、振り返ると大事だったかもしれないですね。

寿人さんはうまくいかない時は人に相談するタイプですか?

佐藤:僕は一人の力じゃ何もできないと思っているタイプなので、色々な人の力を借りながら物事を進めて行った方がより大きな力になるというのは、サッカーを通して学んだことです。サッカーに限らず、子育ても人間関係も含めてそうですけど、苦しいな上手くいかないなと思った時は他者の力を借りるとか周りの意見を聞くとか、それだけで解決策が変わってくると思います。これを自分で解決しようとすると自分の中にある答えしか見つからないので、そう言った意味では人の力を借りて生きていくことは、決して恥ずかしいことではなくて人間らしくていいかなって思いますね。

子育てに悩んでいる親に対して、佐藤さんからアドバイスをお願いします。

佐藤:夫婦間で言えば、1番の理解者になってあげること。奥さんと旦那さんの関係性で言えば、子育ての部分で時には意見の違いだったり、温度差という部分が間違いなく出てくると思うので、そこを理解してあげるのが大事。完璧を求めてしまうと間違いなくストレスになると思うので、余白はお互いに作ってあげていいのかなと感じます。子育て中に、親も色んなことを学んで、時には失敗したなと思いながら、子供に成長させてもらっているという想いも持っていた方が気は楽になるのかな。

子育てというものがストレスに感じている親も多いかもしれませんね。

佐藤:どうしても「子育て」ってなると、親が子どもに手取り足とり教えてあげないといけないという感じになってしまうので。決してそんなことはなくて、子どもと一緒に子育てを通して学んでいくことが大事になると思います。これは個人だけでなく、家族でも乗り越えられないと思った時には色々な人が助けてくれる。助けてくれることに対して、手を差し伸べてあげることもそうですし、つらいと思ったら意思表示を恥ずかしがらずにするってことが大事だと思います。時には困っている人を見つけて、助けることができれば自分が困った時に助けてもらうこともできますし、周りを気にかけるというのも大事だと思いますね。