著名・有名人子育てインタビュー|子ども虐待防止オレンジリボン運動

ひとりで悩まないで著名・有名人子育てインタビュー

安芸戦士メープルカイザーさん
ご当地ヒーロー

長年、児童虐待防止啓発活動を行っている広島のご当地ヒーロー・安芸戦士メープルカイザーさんに、自身の子育て体験や児童虐待防止のためにできることをお聞きしました。

ヒーローという特殊な仕事の中で、どのように子育てと両立されているんですか?

メープルカイザー:ウチは一緒に働いているので、子どもを交代で見ています。ただ自営業で交代でと言っても、突然子どもが熱を出したりするとお客様に迷惑をかけてしまので、一人では子育てと仕事の両立はできない。それを夫婦で上手く交代でやっていくことが一つのコツだと思いましたね。僕らは自営業で一緒にいるけど、旦那さんが外で働いているお母さんはすごい大変だと思います。

メープルカイザーさんは自営業で、お二人とも同じところで働かれている中で、家庭内の役割分担やパートナーへの気遣いで気をつていることはありますか?

メープルカイザー:気づいたら何でもやるっていうのを自分の中で決めています。例えばオムツを替えたりご飯を作ったりっていうのを、嫁さんの仕事って決めつけてしまうと上手くいかなくなるので、例えば子どもがおしっこしていると思ったら自分でオムツを替えるとかやります。「気づいたら自分で替えてくれればいいじゃん」って喧嘩になるから、気づいたら僕でも嫁さんでもどちらかがやればいいかなと思います。

はっきりと役割分担はしていない?

メープルカイザー:はっきりとはしてないですね。そっちの方がウチは上手く行っています。「これは俺がやる」「これは嫁さんがやる」と決めてしまうと、もし困っていてもそれは俺はやらないよってと殺伐とした空気になるので…。例えば部屋の片付けでも、片付けても片付けても子どものおもちゃが出ている。そのままにしておくと、「気づいたら片づけたらいいじゃん」と言われるから、気づいたらおもちゃ箱に入れるようにしています。気づいた方がやるっていうのが丸く収まりますね、子育てというよりも夫婦の関係が。

それでも衝突したり喧嘩した場合は、どう解決していますか?

メープルカイザー:とりあえず距離を置きます。でも、あまり衝突しなくなりましたね。子どもが生まれる前は夫婦二人しかいないから衝突することがあったけど、子どもが生まれると子どもがワンクッション間に入るから、あまり子どものことで衝突することはなくなりましたね。僕の講演会でよく話をするけど、「子育てをするのに地域で育てていきましょう」とか、「子供とコミュニケーションをよく取りましょう」って講演会で言っていたけど、実際に自分に子どもができて子育てをしていると、ちょっと違うなと思うことも出てきます。

子育てをしているうちに、考え方にも変化があったんですね。

メープルカイザー:最初にコミュニケーションを取らないといけないのは、地域でも子どもでもなくて、パートナーですね。夫婦のコミュニケーションをしっかり取らないと、子育てにつながっていかないんですよ。子どもが産まれて8ヶ月くらいの時に、夫婦間の衝突が始まったことがありました。多分お互い子育てのストレスだと思います。その時に、「キャンプ行く?」となって、子どもをテントの中に寝かしておいて、夫婦でコーヒーを飲みながら普段言えないことを話し合いました。あれからキャンプにハマってますね(笑)。

夫婦だけで話す時間が大事だということですね。

メープルカイザー:僕がコーヒーを淹れて、「はい」って渡して話をしたんですけど。こうやってゆっくり夫婦で話すのって久しぶりだなって思って。家でもやればいいんだけど、中々できないですよ。家だと子どもを寝かすと、洗濯や片付けとか他にやらないといけないことが出てくるから。でもキャンプ場に行くとやることがないので、余裕ある時間ができます。やっぱり家だとできないですよね、どこかに出かけて泊まらないとダメだなと思います。

育児に関わってきて、自分で一番ここが変わったなと思うことはありますか?

メープルカイザー:オムツを替えたりとか、ちゃんとやっていますよ。もうじき俺のオムツも替えてもらわないといけないなと思いながら(笑)。育児をしてからは、自分で家の中のことが気づけるようになりましたね。今までだったら任せっきりだったのを、ちょっと僕が手をかければ終わることだなと思って。子どもが生まれる前は、洗い物とかご飯作るのは嫁の仕事とか、そのような感じでしか思っていなかったから。

児童虐待の問題が起きると、お母さんがクローズアップされがちですが、育児をしてくれないお父さんも原因ではありますよね。

メープルカイザー:お父さんも何か家のことで気がついたら、ちょっと手をかければすぐ終わってしまうのに、母さんに任せて何もしない。それで家のことを小言でいうと喧嘩になったりとかね。それだったら自分でやった方がいいなと思いますよね。

お父さんも少しでも育児に関わることが大事ですね。

メープルカイザー:「オムツかぶれができてるじゃん」とかベビーパウダーをポンポンしたりとか、やっぱり育児に関わらないとわからないですよ。何でここが赤くなっているんだろうとか、何かぶつけたのかなとか見ないとわからない。子どもだけじゃなくてお母さんにも気に掛けた方がいいと思いますね。

役割分担をはっきり分けちゃうと、喧嘩になることもありますね。

メープルカイザー:「お前がやるって言ったじゃん」って喧嘩になっちゃうこともありますね。育児が難しいお父さんは、お母さんを見てあげればいいんですよ。「何かやっているからこっちやっとこうかな」とか。「忙しそうだからゴミを捨てておこうかな」とか。お母さんを見てあげると、おのずと育児に参加していくようになりますよ。仕事で疲れていても、ほんの少しでも気にかけることが大事です。ちょっとの時間で済むことなんだから、お父さんにもできますよ。

夫婦間のこと以外にも、周りの人とか環境のこととかで助かったとか。子育てのことで助けられたことがあったりしますか?

メープルカイザー:僕らは親戚がこっちにいないから、仕事の時とかに子どもを預ける人が近くにいないんです。じゃあどうやってヒーローショーをやるのかってなるじゃないですか。嫁さんは司会をやっているし、僕は変身しているし。そこで、いつも追っかけてくれる家族の方が子どもを見ていてあげるよって言ってくれて、一緒にヒーローショーを見てくれたり、すごく助かることはあります。

ファンの方がお子さんを見てくれるんですね。

メープルカイザー:もう知り合いみたいな関係なので(笑)。ほんとちょっとしたことがすごく助かります。例えば近所でも向かいのおばあちゃんも気に掛けて声をかけてくれる。「あら大きくなったね」とか周りの近所が気にしてくれるので安心します。

その中で育児をしていて楽しかったこと、嬉しかったことはありますか?

メープルカイザー:子どもの成長は日々変わっていくので、そこは日々嬉しいですよね。掴まり立ちしたとか、一人で立ったとか、どんどん成長していくのでその過程を見ていくのは楽しいです。

親にとって子どもと一緒にいるのは幸せだと思うんですが、虐待をしてしまう親もあとを絶ちません。

メープルカイザー:どんなに子どもが可愛くても、いつ自分がそうなってもおかしくないなと考えることはあります。例えば仕事で大事な話をしているのに、隣で大きい声で泣かれたりすると「静かにして!」ってイライラする時もある。だからどの親も、虐待と背中合わせで子育てをしているんじゃないかと思います。

キツく叱っても子どもがちゃんと受け止める家庭と、子どもに心の傷を与えてしまう家庭もあります。違いはどこにあると思いますか?

メープルカイザー:それは受け取る子ども側の気持ちなので、親はこれでいいと思ってやっていても、子どもが傷ついてしまったらどうしても虐待になってしまいます。普段からうまくコミュニケーションを取れている親だったら、叱りながらも子どもの気持ちを考えて、逃げ道を作っていると思うので、深刻なことにはなりません。

誰にも相談ができない人は、パソコンとかスマホをずっと見ていて、もっと悪い方向に行く場合もあります。

メープルカイザー:言葉を失うじゃないけど、便利な世の中になるほどコミュニケーションを取りづらくなっていくような感じですね。ネットに正解があると思い込んで、近くの人に相談しようとしない。ネットに書いてあることも誰が書いているか分からないので、正しいことかどうかもわからない。だから、子育てだったら子育ての専門員の方に話を聞くとか、病気だったら病院の先生に会って聞くとかしないといけない。悩んでいるお母さんやお父さんの逃げ道ってそこだと思いますよ。子育てが分からなければ、一回子育てをやったことのある人に聞く道もあるし。正体も分からないネットの相手に相談するよりも、悩みに応じた相談する相手を周りに見つけておくことが大事だと思います。

児童虐待に至らないためにも、家庭で大事なことは何でしょうか?

メープルカイザー:「気持ち」と「時間」と「お金」。この余裕が必要です。汚いように聞こえるかもしれないけど、余裕が全然ない生活をしていると夫婦間はピリピリしますからね。コロナ禍で貧困の家庭が増えているという報道もありますけど、そういう家庭は行政に相談した方がいい。恥ずかしいから相談しない、でもどうしようか、って何もしないと状況は悪化してくるので、近くの役所に行くなり電話をするなりして、専門家に話を聞いてもらった方が絶対に良いです。自分ではどうにもできないことは他人を頼る。僕もヒーローとして、悪役に負けそうな時は皆さんの応援を頼っていますから、何も恥ずかしいことではないです。